伝統を生かし続けること。


先日の記事の続きです。

えむのみのアクセサリーの台紙、納品用の箱の刻印を注文した製本屋さん。
この道20年の製本職人Odileさんに、製本、金箔押しについて色々と面白い話を聞くことができました。

興味のある内容だったので、製本について少し調べました。
Odileさんに説明していただいた内容と交えて、今日は製本について書いていきます。

友人宅にある古本のコレクション。革で製本された古本たち。背表紙の美しさにうっとり。

・伝統的な製本技術
西洋式の製本は、ルリユール(フランス語: reliure)と呼ばれ、製本は中世の時代からの技術で、18-19世紀に最も発達、用いられてきました。
Odileさんは、今でも昔の機械を使って、昔ながらの方法で製本をしています。

Odileさんのアトリエ。魅力的な古い機械や道具がたくさん。


・製本の流れ
製本は全部で60もの工程があります。なんとも手間のかかる作業です。
大体のお客様からの依頼は、一からではなく補修や、改修。
古本コレクターや、先祖から代々受け継がれてきた古本の依頼がほとんど。
そしてほとんどが表紙・裏表紙がボロボロになっているので、補修というよりは、中の紙の部分(冊子)以外を全てやり直すことが多いのだそう。

・本を重ね、重りを載せてしっかりと固定させる。

・糸で冊子を固定して行く。

・背表紙の丸みをつけ、固定させる。
・冊子の1ページ目の台紙をつける。
・表紙、裏表紙をつける。

・表面に綺麗に革を貼る。

・革を背表紙へ貼り付ける。

・背表紙になる革に金箔押しをする。

Odileさんが手短に説明していただいただけでも、これだけの工程。
それぞれの作業が細かく、時間がかかるので、一度にたくさんの本を並行して同じ工程を進めていくそうです。



・製本の歴史
製本の歴史は、中世時代の聖書を作る目的から始まり、教会や王族や階級の高い家柄の人々しか持つことができなかったそう。
その後は印刷術の発明や文化の進化によって、民衆にも広まっていきました。
そして、女性が本を読むということが許されるようになったのも、そんなに昔のことではないという話には驚きました。
その後フェミニズムの話にも発展しましたが、これを掘り下げるには、もう少し私自身の勉強が必要です・・・。

下記、西洋式製本についての引用です。

”西洋における手製本の伝統は、キリスト教の出現により、神の言葉である聖書を大切に保存するために始まった。堅牢性から革で製本するだけでなく、信仰の重要性を印象付けるためにそれらを豪華に装飾することも始められた。イスラムでもコーランを美しく飾り立てる習慣があり、それがイベリア半島経由でフランス、イタリアに伝わった。グーテンベルクの印刷術の発明で書物が大衆化すると、たくさんある中の「自分が所有する一冊」を際立たせるために、装飾に紋章が取り入れられ、所有者の個性を強調する装丁が生まれた。その後、贅沢を嫌うプロテスタントの諸国ではこうした豪華な製本が廃れたが、宮廷文化が華やかだったフランスではその伝統が生き残った。”


このような歴史があるので、お客様の家柄によっては、代々受け継がれてきた大切な本があるようで。
Odileさんは、元々上流階級の家柄だったお客様からの依頼ももちろんあり、とても価値の高い本を扱うこともあるそう。

ちなみに今でもフランスでは、昔の階級社会の名残が残っています。
私にはまだまだ分からないけれど、上流階級の家柄の人たちは少し話し方が違ったり、 Odileさんが面白おかしく真似をしてくれました。笑


そして、興味深いのは、ドリュール(フランス語: dorure)と呼ばれる、製本の作業の一番最後の工程、金箔押しの作業。
背表紙に真鍮製のコテで本の題名や、著者名、装飾を金箔押しで入れます。
中央が題名用のコテ、右は小さな著者用のコテ。

このコテにも、様々な文体があり、そして装飾の部分に使われるフルロン(フランス語: fleurons)と呼ばれるコテ。

このコテからそれぞれの時代の装飾の流行が見られるのです。

この写真にある19世紀末から流行したアールヌーボーの時代のものは、とても分かり易かったです。


(ちなみに、[M-nomi]の文字に使用したのは、著者名として使うとても小さな文字のコテでした。)



・製本の現状
先日のブログでも書いた通り、製本の依頼は、古本のコレクターから修理を受けたり、今でも役所の議事録なども全て製本しているので、その依頼を市役所からも受けるそう。

デジタル化が進み、電子書籍も主流となってきている現状、もちろん製本の市場は大きなものではないけれど今でも、ニッチなお客様からの需要はあるようです。

余談ですが、デジタル化が進むにつれて紙の消費量が逆に増えているという現状もあるそう。パソコンで電気を使い、印刷をして紙を消費する。技術が発達していくのに、エコからは遠ざかっている気がします。



・私たちにできること
Odileさんのように伝統を守っている職人さんを絶やさないようにするには、伝統をうまく活用していく知識が必要です。

文化は生き物ですし、技術の発達もあります。人々の生活の形もどんどん変わってきています。その時代時代で利用できる形に応用して伝統を守っていくことが、私たちにできることかなと思います。

日本でも少しずつ失われつつある伝統もたくさんありますが、それを支えるたくさんの人々がいます。
皆んなでその伝統を守るために、ふと生活の中で、伝統を生かした技術や工芸品などを利用できることがあれば、どんどん使っていきたいですね。

今回は、たまたま見つけた製本屋さんで台紙の箔押しをお願いし、とても綺麗に仕上がっただけではなく、金箔押しや製本のことをみなさんに知っていただくきっかけを作ることができて、とてもよかったです。

金箔押ししたアクセサリーの台紙や箱を受け取った時に、この話を少しだけ思い出していただければ幸いです。


今回紹介させていただいた製本・金箔押し職人、Odile Quersinさんのホームページはこちらから
Atelier de Reliure Dorure Quersin


それでは、A bientôt !アビアント!


引用元

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